都城市内から霧島に向けて幼子が描いたへびのようなくねくねの山道を進む
沿道に落ちている山栗も気になるところだが、がまこう庵のお蕎麦をこの空っぽにしたおなかに入れたいと脇目も振らずにやってきた。
あった!看板発見!!
店内はお昼時を過ぎたというのに満席で待ち人まで出ている。
運ばれてくる蕎麦を待ってましたとばかりに勢いよくすすりこみ笑みを浮かべるお客さんの姿を見てわたしの期待度も急上昇!
HARUKA「店内も販売されている商品もすごく完成度が高いというか出来上がっていますね。」
蒲生氏 「スタッフのみんながやりすぎるんです(笑)自分もだけどみんながやりたいことがたくさんあるから。」
HARUKA「蒲生さんもだけどスタッフの方もすごくいい笑顔!ここで働くのが楽しいというのが伝わってきます。お菓子とかは蒲生さんが商品化したんですか?」
蒲生氏 「父親の代からあったものもあるけど、レシピを変えたりもしている。もともとお菓子をつくるのとか好きでね。大学卒業後、鹿児島の製菓学校に通って、都城市内のケーキ屋さんでも働いた。いずれ蕎麦屋を継ぐと思っていたから、蕎麦打ちは父親から習うとして、蕎麦やこの地域の良い素材を使ったお菓子を作りたいと思ってね。」
販売している商品を〝お土産″とは言わず〝おすそわけ″といっているところにまた惹かれる♡
無添加はもちろん美味しくて本当に良いものだからこそ誰かにおすそ分けしたくなる。
中でも私が好きになったのは、『そばかりんとう』。ぽりぽり固めのかりんとうは蕎麦の香りと味がしっかりとしていて優しい甘さ(*´▽`*)手が止まらず、気付けばあっという間に完食☆次はお試し買いじゃなくたくさん買っとかなきゃ☆
HARUKA「初めから蕎麦屋になりたいと思っていたんですか?」
蒲生氏 「いや、動物が大好きで子供の頃から動物園の飼育係になりたかった。子供のころ親にあまりどこそこ連れて行ってもらった記憶はないけど動物園だけはよく連れて行ってもらったんだよね。それで東京農業大学畜産科をでていざ就活してみたら飼育係は高卒しか採らないって…。野生動物保護の仕事も探してみたもののなかなか空きもなくて…。」
HARUKA「蕎麦を打ち始めたのはいつからですか?」
蒲生氏 「27歳。2代目として継いだのが8年前。継いだ頃はお客さんに父親の味と違うと怒られたこともある。その時はすごく悩んだし、凹んだ。半年・1年ずっと考えて考えた結果『違うものは違うんだからしょうがない』って(笑)。それから自分の蕎麦を作り自分のファンを増やしていくことに専念できた。」
木鉢で行う『水回し』という作業が一番神経を使う 指先をセンサーにして湿度や気温を読み水の量を見ながら この時、頭の中には蕎麦のことしかない
トントンと体に刻まれたリズムは小刻みでいてなんだか心地いい
がまこう庵のお蕎麦は二種類。『生そば』と『田舎そば』
『生そば』打ちたてのそばで細くつるっとのど越しの良いそばになります。割合は一割小麦の一九そば。
『田舎そば』打ったものを一度湯がき冷ましたもの。南九州独特のゆでおき田舎そば。こちらは十割そば。
今日は、温かいかけと冷たいざるの両方が味わえる二味蕎麦と山芋や根菜などが入った冷やし長寿蕎麦を頼んでみました♪
普段、麺物の汁は半分ほどしか飲まないけど空っぽ♡
出汁は鰹・昆布・いりこ・椎茸からとっているそうで旨味がすごい!
〆はやっぱりこれ( *´艸`)
天然酵母のパンはお持ち帰りだけでなく店内でも食べることが可能。
父親の「朝にパンが食べたい」という一言になんとお母さんはドイツまでパンの勉強に行かれたそうです( ゚Д゚)
豊富な商品数。旬のものが多いのもまた魅力の一つ。この時期にしかないものを探しにちょこちょこ覗きたくなる。
2反半の田んぼは合鴨米を育てており、メニューの冷汁のごはんやポン菓子商品ももちろんこのおいしいお米を使っている。
HARUKA「蕎麦打ちも体力勝負ですよね。スポーツとかしていたの?」
蒲生氏 「小・中はサッカー。高校ではレスリング。高校は寮に入っていて夜みんなで相撲大会とかしてレスリング部の先輩に勝って入部の流れになって(笑)。今思えば入部させる作戦だったのかも(笑)。」
HARUKA「レスリングで鍛えた筋肉は蕎麦打ちに活かせていますか?」
蒲生氏 「いや、やっぱ違いますよね(笑)。」
建物は約40年前のもの。階段には白いペンキで塗られた足跡が。
先代の遊び心が刻まれている。
がまこう庵 蕎麦が旨いわけ
一つ.100%都城産の蕎麦
都城盆地は霧島連山に囲まれて朝晩と日中の温度差が激しい。その環境はすごくそばにいいのだ。
しかし年々、高齢化により蕎麦農家が減ってきている。父の代からずっと都城蕎麦を守りたいと農家さんに蕎麦を作ってほしいと何度も何度も出向きお願いをした。
現在、約20農家さんに蕎麦を栽培してもらっている。
いろんな人が蕎麦を作ってくれるのは本当にうれしいし有り難い。
でもその分、蕎麦の出来具合にどうしても個人差がでてくる。種植えの時期も違うし畑の立地も違うので均一にはならないのはどうしようもない。
だから蕎麦の打ち手である自分がどう配合し、打っていくかだ。日々、勉強。
二つ.霧島山麓の水
霧島の山奥になる水源地からひいてきた湧き水のみ。
蕎麦を打つのも茹でるのもすべてこの湧き水。もちろん加工品も同様。
冬はマイナスで凍ってしまうため早めに店に入り、水をちょろちょろと出す。
三つ.玄蕎麦の保管
採れたての新そばを真空状態で詰め、冷蔵庫で保管することで水分量だけでなく蕎麦本来の風味を損なわず一年中、新そばの状態を保つことができる。蕎麦はどんなに優れた技術があっても蕎麦本来の素材が良くなければ旨くない。でっかい冷蔵庫4台で1年分の蕎麦を休眠させる。
四つ.石挽き
蕎麦に摩擦熱をかけない石臼による自家製粉。
臼の見立て・投入量・回転数やふるいの目の大きさも風味を左右する
製粉という作業一つとってもすごくいろいろな種類ができるのだ
同じようにやっても気候によって昨日できたことが今日できないこともある
本当に難しい でももともと理系だから実験みたいで面白い
蕎麦をつくる上で一番好きな時間がこの石挽きをしているときだ
五つ.自然とともにある
幼いころから自然をいただきながら自然をかえしていくことを両親から学んだ。
いわゆる 自然との共存、循環です。田舎の生活はそれが普通の生活なのです。そこにお年寄りの知恵なども入りすごく理にかなった生活が出来ます。
蕎麦殻は蕎麦枕にしたり、鶏小屋に入れて発酵させたものを蕎麦畑に入れて肥料にする。そしてまた蕎麦が育つ。
冬場のストーブはお湯を沸かすだけでなく、ストーブの上で乾物を干す。灰はこんにゃくやあくまきをつくる。
自然の恵みを無駄にせず、自然のままに、自然とともにある蕎麦屋でありたい。
六つ.喜び ・楽しみ
楽しいからやる。楽しいから続けられる。
スタッフ含めて自分が楽しんでやれることが一番。それがお客さんにもがまこう庵の良さを一番に伝えられて満足してもらえると思う。
そして満足してくれたお客さんの笑顔がまた自分たちの励み・楽しみになる。
〝楽しみ″の裏側には大小様々な辛さもある。でもそれもひっくるめて今がある。
がまこう庵には近所のおじいちゃんやおばあちゃん達が「これ買ってや。」とこんにゃく芋や山芋、筍などいろんなものを持ってくる。もちろんどれも自然の中で育った良いものばかり。地域に必要とされるお店であることもまた喜びの一つ。親しみある地域の人々と一緒に何かできることも楽しみの一つ。
― 蒲生 純 ―
1977.6.24生まれ(現在39歳)
蕎麦職人 女の子3人の父親
・たまの休日の過ごし方:子供たちと戯れる
・一番好きな動物:象
―次へのステップ―
父はこの〝蕎麦屋 がまこう庵″をつくり、庄内の蕎麦組合を立ち上げるなどの土台もつくってくれた。自分はこのがまこう庵を通して地元や県外の人たちに都城蕎麦の美味しさ、都城地域の魅力を伝えたい。それが自分のやるべきこと。
―まだまだ納得のいく蕎麦は作れてない―
素材にはこだわっている
蕎麦打ちがもっとうまくなればもっともっと旨い蕎麦がつくれる
まだまだ伸びしろがあるから面白い 蕎麦は本当に奥が深い