Now Loading...

映画『光』

スペシャルインタビュー

映画光 インタビュー

人はどんな状況でも、生きていくと小さな闇を抱えてしまう。
その闇をちょっと無理してでも頑張って先に進むと、きっとそこに光はある。
そういったことを監督は伝えたいのだと思う。

『第70回カンヌ映画祭』では、「エキュメニカル審査員賞」を受賞し絶賛された、現在公開中の映画 『光』。
前作『あん』に引き続き、河瀨直美監督と永瀬正敏氏がタッグを組み、ヒロインに水崎綾女氏をむかえた渾身作だ。6月17日(土)宮崎キネマ館で開催された主演 永瀬正敏氏の舞台挨拶に伴い、製作のエピソード、映画への想いを伺う事が出来た。ー映画『光』 storyー

命よりも大事なカメラを前にしながら、徐々に視力を奪われてゆく弱視の天才カメラマン中森雅哉(永瀬正敏)。
目の見えない人が映画を観る手助けをする、映画の『音声ガイド』という難しい仕事に葛藤する美佐子(水崎綾女)。
音声ガイドモニターのひとりとして出会った二人は、交流の中で衝突しながらも理解を深め、惹かれあっていくラブストーリー。

永瀬さん

photo:HIROHAMA

上映後の反響・印象深かった声はありますか?

日本では先日、映画コメンテーターのLiLiCoさんとトークをご一緒させていただきました。
監督も登壇の予定はなかったのですが、他の仕事のあと、駆けつけて舞台挨拶をしました。
舞台挨拶後、初めてサイン会を開催したのですが、その時に直接意見を聞かせていただくことができて。

いっぱい泣かれるのですよ。監督にお礼をすごくおっしゃって。『こういう映画を作ってくださってありがとうございます。』という方とか、

お一人の女性は、自分のお兄さんがカメラマンだけど眼の病気になってしまって。まさに雅哉と同じ境遇の方がいらっしゃっいました。
その方は、『観るのに本当に勇気がいったのですが、観て本当に良かったです。』と監督の手を握りしめてお話されていました。

今回の映画は前作の『あん』とはまた違って、静かなアツい熱を感じていますね。

皆さんから託してもらった気持ちを裏切ってはいけないと雅哉を演じていた。

クランクイン前には、雅哉と同じように障害を乗り越えられている方々と、実際にお会いされたそうですが、役作りにどのような影響がありましたか?

色々な想いを託してくれて、生活しているご自宅や仕事場に行かせてもらって色々見せていただいたので。

本当はきっと思い出したくないようなことも教えてくださって。皆さんから託してもらった気持ちを裏切ってはいけないと雅哉を演じていました。

ちょうど雅哉が描かれている時期、弱視になって、いずれは失明する。そう言われている時期が一番生きるのが辛かったと言われていました。

自分に置き換えても途方にくれてしまうと思います。もしかしたら自分は諦めてしまうかもしれません。
皆さん、そこを乗り切って来られた方々だったので、相当な想いをしてきたのだと思います。

カンヌ 河瀨監督・永瀬正敏氏

撮影途中から食事を断ったそうですね?

断食というか、僕も弱視を体験するキッド(視界が悪くなるキッド)をつけて生活していたのですけれども、それでも、僕は見ようと思えば見えるので。
その人達の気持ちに100%近づくのは無理かもしれないけれども、できれば99.9%くらいまで近づきたいと思って。
そうしたら人間の中の色々な欲求の中の食を経とうと思い。監督にご相談してOKいただきました。
断食しようと思っていたわけではなく、少しでも近づかなきゃ失礼だと思って。


光 永瀬正敏

光 永瀬正敏・水崎綾女

©2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

雅哉にとって一番大切なカメラを失うということ。永瀬さんに置き換えたとき、俳優業など一番大切なものを失っていく過程を考えると、どのような感情でしょうか?

こんなに強くいれるかなと思う・・・。
お話聞いた方々はみんな強く生きていられるのですよ。
諦めていない方もいらっしゃるし。

若い可愛い女性にお会いしたのですが、本当に雅哉と同じ状態で。
美術が好きでキュレーターになりたくて、パリに留学している途中に目が霞むなと思っていて。
日本に戻ってきて病院に行ったら、雅哉と同じ症状である事が判明したと。

まさに雅哉と同じく、多分失明してしまうという女性がいたのですが。
その方は、それでもまだ諦めていなくて。
目が見えなくても何か美術に関わっていきたい。でも生きていかないといけないから、指圧師の勉強をとろうと今勉強しています。
そういった方もいたりして。

僕はどうなんだろうな・・・。
もしかしたらそれを武器にしちゃうかもしれない(言い方が悪いかもしれないけど)。
そういう役でもあればお芝居をしたいと思うし、でも圧倒的に現場にも迷惑をかけてしまうし、そういう役も少ないわけで。
そうなっても、役者っていうことを捨てざるをえなくても、それでも僕の光は、やっぱり映画だから。映画には関わっていたい。そう思いますね。
何かお役に立てることを見つけて現場にいたいなと思います。

映画というでかいくくりの中では、何かわからないけど、きっと光があると信じて、映画には関わっていたいですね。
もうやめられないですね。

どれだけこの瞬間が大事なのかというのは、今までと感じ方が違いますね。

1日1日カットがかかったあと、そしてクランクアップした後。
雅哉という役が永瀬さんにどんな影響を与えましたか? 《舞台挨拶 参加女性からの質問》

河瀨監督というのはお芝居をすると怒られるのですよ。
『今の永瀬が演じる雅哉だな〜』『雅哉でやって。』『ちゃんと雅哉になって』ていう人で。

だからずっと雅哉で生きていたんですね。その期間。
雅哉っぽくお芝居をしよう。というのではなく。
今でも観るとすぐ戻ってしまうんですよ、雅哉の感情に。
昔のアルバムを見るようにその時のことが鮮明にうかびあがってきて。

最初の試写のときに、大体試写っていうと皆さん、終わったあとロビーに集まって『良かったですよ』とか色々と言っていただくんですけど。
言葉がでてこなくて、一人いなくなっちゃったんです。
でも、そこで見ていた藤竜也さんも同じようにすぐに立たれたそうで。
それは、返す言葉が見当たらないからっていう。

河瀨監督は、藤さんが言うには、『魂の盗人』、魂をもっていかれちゃう監督さんなんです。
だから今日も最初の回も見なかったですね。見るとみなさんの前に出れなくなってしまうので。
そのまんま帰ってしまいたくなるので。
それだけの思いをこめたでっかい作品になったと思います。

光 永瀬正敏
光

©2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE


光 永瀬正敏

©2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

実際に永瀬さんが、カメラを持たれて写真を写されるときに
この映画の前と後と感じ方や撮り方、光の入れ方が変わってきているのでしょうか? 《舞台挨拶 参加男性からの質問》

どうでしょうか。
それは、これから後の自分の作品をみて気づくかなということもあるかと思いますけど、
どれだけこの瞬間が大事なのかというのは、今までとちょっと感じ方が違いますね
シャッターをこう一回一回きれる、ピンともあわせられる。
普通のことなんだけれども、それもこう、大切な瞬間と思えるようになってきましたね。
だから1カット1カットが重くなっている感じがします。
自分の中では、せっかく撮らせていただいていますし、できれば良い作品を残したいですしね。

その重みが変わってきているかもしれないですね。もしかしたら。


この映画から、伝えたいこと

たくさんありますが、視覚障害者の方が生きるには、まだまだ生きにくい実態があります。
ディスクライバー(音声ガイドの原稿を書きあげるライター)の方々の活動も知っていただきたい。

人ってどんな仕事でも生きていくと、小さな闇って絶対かかえちゃうのだけど。
それをちょっと無理してでも頑張って先に進むときっとそこに光はあるんだよ。

そういうことを、監督は伝えたいと思うのです。

僕たちが一生懸命映画を作っているのですけれども、映画っていうのは観ていただかないと完結しないんですね。
こうやって今日観ていただいて、やっと映画が完成して。
その後きっとどんな気持ちでも良いので持って帰っていただいて成長させていただくものが映画だと思うので。
是非沢山の方々に観ていただきたいですね。

光 永瀬正敏インタビュー

photo:HIROHAMA


光 永瀬正敏

©2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE

映画『光』

映画『光』公式サイト

ー作品情報ー
2017年5月27日(土)から新宿バルト9、丸の内TOEIほか全国公開。宮崎では、宮崎キネマ館にて6月30日(金)まで上映中。
監督・脚本:河瀨直美
出演:
永瀬正敏 水崎綾女 神野三鈴 小市慢太郎 早織 大塚千弘 / 大西信満 堀内正美 白川和子/ 藤竜也
配給:キノフィルムズ / 木下グループ