ガタン、タン、ガタン、タン、ガタン、タン・・・
子供の頃に聞いた昔話を思い出させる懐かしい織り機のリズムが響く東郷織物の織り工房では、世界三大織物にも数えられる国の伝統工芸品、大島紬をつくっています。
紡いだ絹糸を草木で染め、手織りの平織りで絣(かすり)合わせをして織上げた大島紬は、優雅で気品ある光沢と、しなやかでなめらかな肌触りに世界の人々が魅了されます。
※絣合わせ…大島紬は「絣」という点で柄が作られており、経の糸に緯の絣を合わせること。
この大島紬の高度な技法を受け継ぐ新たな担い手の掘り起こし、後継者育成支援を目的に、都城市ふるさと産業推進局が7月31日、8月1日の2日間後継者インターンシップを株式会社東郷織物で開催しました。
全国各地からなんと69名の応募があり、書類選考とウェブ面談で選ばれた美術工芸を専攻する学生等6名が千葉・奈良・沖縄など全国各地から参加し、織物仕事体験のほか、地元の方との交流や先輩移住者との座談会等が行われました。
<参加者の声>
三橋さん(奈良在住の20代)
中学2年生の頃に母に連れて行ってもらった着物の展示会で大島紬を初めて見て一目惚れし、大島紬を織りたいという夢ができました。
高校卒業後すぐに大島紬の工房に入ることもできるが、なるべく最低限の知識を身につけてから入りたくて奈良県の着物の大学で織りを専攻し、糸を染めるところから織りまでを学んでいます。
着物の学校なので各地の素晴らしい織物と出会いますが、やはり私の中で大島紬を超えるものはありません。
伝統を守るために織るだけの職人になりたくなくて。
使い手も職人も少なくなっていて、着物を残すためにどうすればいいのかをよく考えます。
織ることはすごく大好きですが、織るだけの作業では織物はつくれません。苦手な作業もあるけどその作業がないと良い織物はつくれないし、最大限良いものをつくりたいです。辿り着くにはまだまだ時間はかかると思いますが、大島の経緯絣を織れるようになりたいです。
國府さん(沖縄在住20代:宮崎県西都市出身)
高校生の頃に祖母が大島紬を見せてくれました。明らかに他の着物と違う色、手触り、美しさに惹かれ、感動し刺激的な出会いでした。そこからずっと大島紬に憧れを抱き続け、芸術系の伝統工芸を学べる学校に進学しました。
今回は、貴重な大島紬を実際見ること・織ることができる機会をいただけて本当にありがたいです。宮崎の身近な植物を使って染めた糸で大好きな宮崎の自然の素晴らしさを伝えられるデザインができたら嬉しいです。
<都城市役所担当者の想い>
都城市の伝統的工芸品である大島紬は、生産者が減ってきており、現在、株式会社東郷織物の1社のみです。年々、織り子さんが減少・高齢化している状況があり、本市の工芸品がなくなってしまう恐れもあります。本市の誇る技術を次世代に継承するため、全国の美術工芸を専攻する学生等を対象に、インターンシップを開催し、将来の担い手として、育成及び定着を図りたいと開催しました。
市としても、後継者の定着に向けて、東郷織物及び後継候補者のサポートを実施してまいりたいと思います。
ー取材HARUKAー
大島紬の話をする参加者たちの表情はとても豊かでキラキラとした笑みの中に芯が強さを感じました。織子になる夢を是非この都城で叶えて欲しいです✨
【株式会社東郷織物】
〒885-0031 宮崎県都城市天神町3-6